1997年に文壇デビュー、ライトノベル小説「半分の月がのぼる空」シリーズで知られる橋本紡。同著者によるせつないヒューマンドラマが描かれた小説『流れ星が消えないうちに』(新潮文庫刊)は、新潮社が毎年選ぶ<新潮文庫の100冊>に連続で選ばれており、発行部数30万部を超え、広く親しまれている作品。その根強い人気の高さゆえ、映画化を熱望されていた今作が、遂に完成。
主演には、恋人の死の喪失感と対峙、前を向かなければと足掻き続ける本山奈緒子役に波瑠を迎える。波瑠は現在放映中のNHK連続テレビ小説「あさが来た」のヒロイン今井あさ役を演じる。絶望の縁から動けなくなってしまった奈緒子の支えになろうとする現在の恋人・川嶋巧役に『キカイダー REBOOT』(14)で主役のジローを熱演した入江甚儀。死により奈緒子と巧の心に深く悲しみを残すかつての恋人・加地径一郎役には、NHK連続テレビ小説「まれ」の葉山奨之。また、奈緒子の妹・本山絵里役に「アオイホノオ」(14/TX)『あしたになれば。』(15)などで脚光を浴びた黒島結菜。今、最も注目の集まる若手キャストが揃った。そして、奈緒子の父・本山諒役に実力派俳優の小市慢太郎、ほか、石田えり、古舘寛治、西原亜希、岸井ゆきの、八木将康(劇団EXILE)、渡辺早織らが個性的な俳優陣が脇を固めている。メガホンを取るのは『君の好きなうた』(11)の柴山健次監督。美しい映像構成、緻密な心理描写は見ている者の心を掴んで離さない。撮影は武蔵野市・三鷹市で行われ、その街並みは物語の世界をより魅力的なものとしている。
13年4月著者の橋本紡はSNS上で突然断筆を示唆する内容を発表した。エンターテイメント小説が売れなくなったこと、家族や大人の男女を描いたものが売れなくなったこと、それは橋本紡にとって大きな失望となった。部数は読者の数であり、部数が伸びないということは自分が世間に伝えたい想いが届かないということであり、自分は世間とずれてしまったのだと。ただ、未来に希望を残す内容も示唆しており、その復活を願うファンは多い。
「痛みも書きたい。得ることは失うことでもあるのだと」そういった想いを持つ橋本紡の物語の映画化、製作陣は力を結集させ、本作に挑んだ。